Satén養生記 第三話「カワセミ死す!!おそるべし商標登録」 | cafemagazine

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Satén養生記 第三話「カワセミ死す!!おそるべし商標登録」

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Satén 養生記 
第三話「カワセミ死す!!おそるべし商標登録」


 
 
皆様、こんにちは。早くも気ままなブログも三話目となりました。

工事風景をお伝えしたいが為に、急ピッチで綴らせていただいておりましたがいよいよ忙しく、ここからは少し休み休みでございます。
回想編は人気がないと相場が決まっておりますので、果たして何人がついてきてくれているのでしょうか。

さて、今回は少しタイトルのポップさとは裏腹にシリアスな展開でございます。
とはいってもいつも通り、トイレで読むのに程よい駄文でございます。
暫し、戯れにお付き合い下さいますと幸いです。

それでは、、、
私が人生で初めて絶句した話でございます。

前回、小山君との出会いやカワセミ誕生のお話をお伝えさせて頂きました。
2月には抽出舎として会社を立ち上げ、小山君はUNISTAND,私はブルーボトルコーヒーを退社し、店の準備を進めていきました。

当初は3月中旬のオープンを目指し、場所は中目黒の川沿い。ひょんな事からお話をいただき、物件も決まりかけていたのでした。

そんな私の日常は、毎日定時に出社し、ほぼ定時に帰宅するというバリスタとしては非常に恵まれた前職での環境から一転、気ままな猫のような生活に変わっていたのでした。
飼い猫なら良いけれど私は野良猫なのだった。

カフェで働いていて長時間利用のお客様への対処には困ることは、しばしばあったが、それも一転、wifi環境、長時間いられることへのありがたみを感じることもありました。
立場が変われば、あのお客様にはどんな言葉をかけたら良いのだろうか。何が嬉しいのだろうか?今はふとそんな風に考えます。

店についての計画、構成、色んな事を考えながら日々を過ごしていきました。
これまで慌ただしい日々である事が多かったので、日の長さを久しぶりに感じ、夕刻の鐘もどこか懐かしく黄昏ることも少なくはなかったと思います。
しっとり。
希望の船出とは裏腹に燃料を積み忘れていたかのような日々。
楽しいような、寂しいような。
はてさて。

そして、悲劇が起こる。決まりかけていたかのように思えた中目黒の物件ですが、今私が飲みかけのビールのように泡と消え、、、一から物件を探す事となったのだ。
となると、のんきに夕日を眺めているわけには行かず、解けた紐を結び直すかの如く気持ちを切り替える必要があった。

つまりは、ここからがある意味、私の真の養生記の始まりなのです。

物件探し、これはもう、、、楽しくもあり、緊張感を伴う、、、まさに大スペクタルだ。全米が泣く可能性も少なからずある。
いや一人は泣いた。
私である。

立地、、、今まで数多くの店で働いてきたが客数、空間、売り上げ、極論、人生に影響する要素であろう。それだけ、悩ましい。

いくつか不動産屋さんに連絡し、条件を伝え、歩く。内見を予約し街の雰囲気を肌で感じる。とにかく足で探すしかないなと思い、中央線沿いを歩いた。
野良猫でよかったよ。感覚は悪くない。

偶然にも、最初に出会ったのが、西荻窪の今回の物件であった。
私は幼少期からこの辺りに住んでおり、普段からよく通る道。弾○(ダンボール)という店で内見当初はまだ営業中だった。
その店はずっとそこに在り続けるいわば動かない店だったわけで、今でも内装工事の合間に近所の人がダンボールさんのことを聞いてくる。それだけ長く愛されている立地なのだ。
また、ダンボールって、と思いながらもどこかで嫉妬した。弾に○でダンボールというセンスも味がある。
角地でカウンターの雰囲気も良い、変わったL字の物件、地下に倉庫付き。何より壁に味が出すぎているぐらい出ていた。染み出すその雰囲気は容易には抽出が出来ぬ個性のように感じた。
ここいいなぁ。最初の内見だったので、決めかねる。
いい物件ほどすぐに決まってしまう可能性があるだけに出会ったらアプローチしたくなるナンパのような感覚、スリルがある。
ナンパなど生まれてこの方したことも興味もないのだが。

その後も10坪ぐらいで家賃は抑えめ、小山君と私が通いやすい、また、働くイメージができる土地で探した。
主に中央線沿線、京王井の頭、京王あたりを見てまわった。
今回、小山君と私以外にも経営面、デザイン面、店舗設計、内外装、サポートしてくれている頼もしい方々がいて、日々相談したり、一緒に取り組んだり本当に助けられている。
店作りの醍醐味は、人が集まる場所を人と一緒に作ることでもあるのかもしれない。
と綺麗にまとめたけれど、孤独に塗装するのも好き、私はそんな厄介な男なのでございます。

今回決めた物件以外にも良い物件も出てきたので、
最終決定前、物件取得費、スケルトン、居抜き、融資、初期投資など、頭を悩ませる言葉をそれぞれの脳みその中で咀嚼、反芻した。

みんなで悩み、弾○で食事して見て、ダンボールに書いてあるメニューにまた嫉妬して見たり、牛すじに舌鼓打って見たり。
とまぁ、物件選びだけでまだまだ書けるのだけれど、それはまた別のお話で。


 
そんなこんなで物件は、なんとか無事(物件取得費や諸々厳しい現実に苦しめられつつも)に所得でき、ロゴもお願いし、内装もスタートさせ、順調に走り出したのである。
いや、はずだったのである。

いつものように全身レインコート、フードを目深にかぶり、手にはゴム手、マスク着用、のあやしげな格好で孤独の塗装にいそしんでいた。

一本の電話がかかってきた。

「カワセミが商標で引っかかるかもしれません。」

藪から棒に。どうゆうことだろうと思った。それはウェブ、デザイン等をサポートしてくれている方からだった。

今回、抽出舎という事業、また、Saténという店は茶葉やプロダクトなどの販売も行う予定で商標登録をしといた方が良いのでは?ということで調べてもらったのだ。

今まで商標登録については自分が関わることはない世界だと思っていた。
というよりも取り立てて気にした事もない。
かなり下品な表現で失礼するが、100メートル先のだれかが放屁したとしても気にしないそんな感覚に近い。

続けて、こう話すのである。
「最悪の場合、Kawasemi Japanese Teaという名前は使えなくなるかもしれません」
多少の名前の差はあるものの、大手のカフェ業態の会社と被っていたのである。

Kawasemiという名前を、私は心底気に入っていた。
これまで物件選びから内装など全てにおいてイメージしていたのはKawasemiでイメージしていた。

その瞬間、しばし言葉が出なかった。
まさに絶句。

すぐに予定を調整し弁理士の方に相談しに行くこととなった。
何か方法はないものか?どうにかならないだろうか?

商標登録は仮に店舗が閉店していて存在してなくとも権利は10年残るとの事。細かく区分されているのだが、

35類 菓子・パン・ハンバーガー・サンドイッチ・茶・コーヒーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便宜の提供
 
43類 菓子・パン・ハンバーガー・サンドイッチ・茶・コーヒーを主とする飲食物の提供
 
が被ってしまっていたのである。

どうしてもKawasemiを使いたい場合は、
カワセミの○〇〇、Kawasemi &○〇〇、Kawasemi’s〜 のように非類似にする必要があるとの事。
Kawasemi’s Japanese Tea
カワセミーズ。。。
ほんの少しのニュアンスでものすごくダサくなる。

あれだけ悩みに悩んだカワセミという名前、愛着があった名前、未来を思い描いていた名前。。。

しばらく言葉が出てこなかった。思考が停止していた。

しかし、いつまでも立ち止まるわけにはいかず、すぐに切り替え新しい名前を考える事となった。

余談であるが、私は自転車に乗っている時、思考が冴える。
特に遠出というわけでもなく何か思いつくときは大抵乗り物に乗っている時だ。
一方、家では怠けてすぐ寝る。寝てしまう。猫だよ。まったく。

そして、急ピッチで頭をフル回転させ、奇跡的に生まれた名前が現在の「Satén Japanese Tea」で、
表記もSatinにするか?など、
また次の楽しい悩みへと昇華させることができたのであった。

斯くして、カワセミは死んだのである。

太’’郎
マクアケでのクラウドファンディングも残りわずかの期間となりました。
ご支援いただき本当に感謝しております。
しつこくなってしまい大変恐縮ではございますが、最後まで見届けていただければ幸いです。
もし忘れていた方、迷っていた方おりましたらお力添え頂けますと嬉しいです。

クラウドファンディングページ
https://www.makuake.com/project/saten/ 
 
 
 
会社紹介について

(株)抽出舎という会社を日本茶の小山和裕さんと共に立ち上げました。
長くバリスタという仕事に従事する中で、海外の模倣ではなく、新たな型を発信して行く必要性を感じ、日本の文化との調和、日常に根差した店作りを目指したいと強く思う様になりました。

日本茶、珈琲など飲料は水を介して抽出されるもの。
生きるには水でよい。人は何故、抽出という工程を経るのだろうか。
抽出とは水に愉しみを与える事、嗜好とは人を時に迷わせ輝かせるもの。

抽出舎では「水と共に愉しみ抽出を哲学する」という理念を掲げ、抽出を行う淹れ手として利を生み出し、継続させていく事を目指していきます。
店舗運営だけでなく、小売、店舗プロデュース、コンサルティング、トレーニング等、多角的に行っていく所存でございます。
 
 
店舗について
茶店、織物を意味する日本茶スタンドSatén Japanese tea を四月下旬に西荻窪にオープンさせます。サテンには出会いやご縁を紡いでいく事、昔から日本の憩いの場として存在していた茶店(茶屋)を見直し、日本国内だけでなく海外にも新しい型を提案していけたらと思い名付けました。死語では無くカッコいい言葉として世代問わず使って頂けたらと思っています。
日本の古き良きものを見直し発信していけたらと考えています。