Satén養生記 第四話「ハイチュウ北欧味」 | cafemagazine

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Satén養生記 第四話「ハイチュウ北欧味」

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Satén 養生記 第四話「ハイチュウ北欧味」
 
さて、何から語ろうか。
まずは今、私が改めて思っている店のイメージである。素材はダンボール、ソフトでレトロなジャパニーズスタイル。隠し味に北欧を加えてといったところか。
付け合わせには涙で塩味を効かせた苦味が特徴の苦労のソテー。付け合わせは残しても構いません。記憶の断片がふと蘇る様な。そんなお店になったら嬉しい。

今回は日本茶のスタンドなので、柔らかくてケチャップまみれの炒めたのとかはないけれど、いつか懐かしさを集めたおもちゃ箱の様なお店も作りたい。そんな風に思う事がある。

さてそれてしまったが、本題に戻ろう。

今慌ただしく打ち合わせを終え、電車に揺られている。
前回までの内容で、ようやく現在までの我々が置かれている状況の一端をご理解いただけているかと思う。いや、いただけていると嬉しい。
相当切迫している。
オープン日は4月23日、このブログを書いている今も孤独な塗装をしている。
伝えたい事が多くてまた少し振り返らざるを得ない。すぐに今の工事風景を伝えたいのだが。。。

四月からは小山君と合流し、店舗準備を進めている。ユニスタンド最終日、少し働かせてもらってマジンガーZ最終話にグレートマジンガー登場の様なシーンをやってみたいと思ったが結局失敗し、一杯も淹れる事が出来なかった話はここだけにしておこう。

三月の物件取得から解体作業、内装前の下準備を始めた。
改めて今回の物件はこちらである。
 

 
西荻窪で約8年営業していた弾○というお店の跡地である。自分で店を開ける時、スケルトンで一からやろうと今までは考えていた。今回は居抜きを選択した。当然カウンターの配置を変えられない事、中古の厨房設備、いらない器具、設備、年式などデメリットは承知の上だが、この物件に出会った時、カウンターの表情、場の空気感、どれも味があり、生き別れの誰かに奇跡の再会をした様な不思議な懐かしさと落ち着く感覚。
 
費用面を抑えられるメリットももちろんあるが、残せる味は残したいと思った。噛み続けて味のなくなったガムはスグに捨ててもいいけれど、まだまだ噛めば噛む程味わえるそんな空間に感じる。フルーティで爽やか、そんなガムで無い事は今までの文脈から推しはかれるであろう。
染み込んだ油は歴史を物語り、この土地を引き継ぐ事の重大さを感じさせる。とにかく落とすのが大変であった。天井から床までメイラード反応かと言わんばかりに茶褐色なのだ。コーヒーで言ったらシティローストまで達してるやつもいる。塗装前のクリーンは仕上がりにおいて重要であるからに必死に磨く、磨かざるを得なかったのである。

続いて、内装のデザインをやっている会社を片っ端から調べ、どこが良いか探した。建築系に詳しいNUSHISAの竹俣さんに相談しオススメを聞いたりしていた。
日本茶の店なので和のデザインに強いこと、シンプルで普遍的である事などなど条件に当てはまりそうな所をピックアップしていただいた。
水まわりなどの新規の工事が必要ない事、大きなレイアウトの変更がないとなると一から内装会社を入れ、デザイナーさんや建築士さんに頼むというよりも自分達で出来る所はDIYで仕上げていけるのでは?と竹俣さん。
「竹俣さん、興味ないですか?」
今回こんな流れで、スーパー助っ人を得る事が出来たわけであった。


竹俣さんには過去にカフェキツネのドリッパーを製作していただいた事がある。
 
 
ウッド、モルタル、シンプル、タイル、レトロ、北欧など、アキカウリスマキのファンがやっている西荻のカフェユハで打ち合わせし、イメージを伝えた。
私もカウリスマキの映画に出てくる様なパステルカラーの青やグリーンなどを壁に使いたいなと考えていた為である。
色味を決めるため塗料屋さんに行った。落ち着いていて飽きがこない。壁の色はこの先何年も過ごすことになる家族の一員なのだ。それは言い過ぎか。
ボールは友達的な感覚だろうか?
 
あとはレトロな喫茶店や銭湯の様に部分的にタイルを使いたいなぁとか。
そんなこんなで走り出したわけである。


色選びに2時間悩んだり。汚れても馴染む。ウッドやモルタルとも調和する色を求め。
 
常にライブ感があり、昼ご飯を食べながらふと壁紙からインスピレーションを受けたり、西荻の街の空気や個性的な店に刺激を受けたりと、日々店が進化していった。
 

竹俣さん無くして、今回の内装はこんな面白くかっこいい仕上がりにはならなかったのではと思う。そして色々と無茶なご相談ばかりを私達はしてしまったわけで本当にありがたく、恐縮である。
和素材を巧みに活かし、絶妙な空間になっている。
手漉き和紙のカウンター、布クロスの壁、ベルベットのベンチシートなど今はなかなか使われなくなった素材を使い、温かみや懐かしさを感じる空間になったのではと思う。
実際に和紙を選びにいったり、タイルを見にいったり、ベルベットを選んだりと素材や建築資材にこの数ヶ月でかなり詳しくなった。
 

和紙は1点ずつ表情が違う。これまた長時間悩んだのは言うまでもない
 
 

生麩糊を現場でコンロで作る姿を見ることは稀であろう


 

床の間の様な神聖な空気が漂う空間に布クロスを貼る
 
 
レトロさ。サテン感を求めて潜る
 

そして一方の私も内装業者なみに養生し、塗装技術も日に日に上達していったのである。 


ベタ塗りしたくない部分を柔らかい刷毛で踊らしながら掠れた仕上げに


壁に合わせて綺麗に塗った壁に溶剤を染み込ませ当てムラを作る。
 
後に知ったがプラモデルの世界ではアルコール落としという技らしい。
 

職人さんとともに飲む缶コーヒー。極みであった。
 
 
今回はここまでにしておこう。
次回オープン直前スペシャル。書く暇ないかも。

太’’郎
 
 

 
 
マクアケでのクラウドファンディングも残りわずかの期間となりました。
ご支援いただき本当に感謝しております。
しつこくなってしまい大変恐縮ではございますが、最後まで見届けていただければ幸いです。
もし忘れていた方、迷っていた方おりましたらお力添え頂けますと嬉しいです。

クラウドファンディングページ
https://www.makuake.com/project/saten/ 
 
 
 
会社紹介について

(株)抽出舎という会社を日本茶の小山和裕さんと共に立ち上げました。
長くバリスタという仕事に従事する中で、海外の模倣ではなく、新たな型を発信して行く必要性を感じ、日本の文化との調和、日常に根差した店作りを目指したいと強く思う様になりました。

日本茶、珈琲など飲料は水を介して抽出されるもの。
生きるには水でよい。人は何故、抽出という工程を経るのだろうか。
抽出とは水に愉しみを与える事、嗜好とは人を時に迷わせ輝かせるもの。

抽出舎では「水と共に愉しみ抽出を哲学する」という理念を掲げ、抽出を行う淹れ手として利を生み出し、継続させていく事を目指していきます。
店舗運営だけでなく、小売、店舗プロデュース、コンサルティング、トレーニング等、多角的に行っていく所存でございます。
 
 
店舗について
茶店、織物を意味する日本茶スタンドSatén Japanese tea を四月下旬に西荻窪にオープンさせます。サテンには出会いやご縁を紡いでいく事、昔から日本の憩いの場として存在していた茶店(茶屋)を見直し、日本国内だけでなく海外にも新しい型を提案していけたらと思い名付けました。死語では無くカッコいい言葉として世代問わず使って頂けたらと思っています。
日本の古き良きものを見直し発信していけたらと考えています。